| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-215  (Poster presentation)

アブラナ科4種における植物炭疽病菌の植物宿主・組織への特異性と季節性【A】【B】
Seasonality of anthracnose fungi and their specificity to plant hosts and tissues in four Brassicaceae species.【A】【B】

*鈴木暁久(筑波大・山岳セ), 出川洋介(筑波大・山岳セ), 晝間敬(東京大学), 田中健太(筑波大・山岳セ)
*Akihisa SUZUKI(MSC, Univ. Tsukuba), Yousuke DEAGAWA(MSC, Univ. Tsukuba), Kei HIRUMA(The Univ. of Tokyo), Tanaka KENTA(MSC, Univ. Tsukuba)

植物は多くの微生物と相互関係を築いている。多くの病原性微生物が植物の成長・生存・繁殖に悪影響をおよぼす一方で、植物に内生する微生物の一部は植物に利益を与える共生菌として振る舞い、植物の免疫機能の強化や、土壌から植物への栄養輸送を担っている。例えば真菌Glomerellales目のColletotrichum 属菌は、植物炭疽病を引き起こす病原菌として従来知られている。その反面、特定の条件下では土壌からシロイヌナズナへのリン酸塩輸送を担う共生的な機能が近年報告された。しかし、野外生態系においてアブラナ科植物-Colletotrichum 属菌の相互作用を追跡した知見は少ない。そこで本研究では、野外生態系内におけるアブラナ科植物4種を対象に、Colletotrichum属菌の出現を野外追跡し、Colletotrichum属菌の植物種特異性・組織特異性・季節性を調べた。
長野県上田市の菅平高原実験所草原・打越城跡・横尾城跡の草原性生息地3箇所で、4属・4種のアブラナ科植物(ハタザオ・ヤマハタザオ・マメグンバイナズナ・ミヤマハタザオ)のロゼット葉・茎葉・根を採集した。ただしミヤマハタザオは実験所の野外圃場に生育している個体を対象にした。5〜10月に1~4週間隔で調査地を訪れ、1回の調査で各植物種について1~2個体から採集し、合計23回の調査で合計247試料を採集した。採集した試料は25度条件にしたシャーレ内で湿室培養した。
その結果、形態的特徴からColletotrichum 属菌と判断できる菌類が4植物種すべての計10試料の葉から得られた。根では対象菌が確認できず、培養条件の検討が必要である。5月の試料における菌発生頻度が最も高かった。一方で5月でも菌発生が確認されない宿主植物がいた。
以上より、Colletotrichum属菌は野外のアブラナ科植物の葉に生息していることが分かった。さらに、宿主植物によって菌の季節性が異なることが示唆された。通年の季節性を考察するためには3,4月の試料採集をはじめ、継続して調査する必要がある。


日本生態学会