| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-219 (Poster presentation)
植物の戦略には成長と生存のトレードオフが存在し、資源獲得的な戦略から資源保守的な戦略への勾配で表される。葉形質はこのトレードオフと密接に関連しており、資源獲得的な戦略を持つ種はSLA(葉面積/葉重)が高いことなどが知られている。根でも葉と同じような傾向があると考えられており、葉形質が資源獲得的な場合には根形質も資源獲得的になると予想される。しかし、先行研究においてSLAと根形質の関係性については一貫した結果が得られておらず、地下部のどの形質が地上部の獲得-保守の勾配と関係するかは議論の分かれるところである。また、先行研究の多くは野外の植物の根形質を測定しているが、葉と根の形質は同種であっても環境によって可塑的に変化することが知られている。そこで、今研究では栽培条件を揃えた共通圃場実験を行い地上部形質と地下部形質を比較した。
環境省モニタリングサイト1000の森林サイトから出現頻度が高く、優占している樹種のなかから針葉樹7種と常緑広葉樹7種、落葉広葉樹19種の合計33種の当年生実生を栽培した。川砂を詰めたポットで栽培を行うことで土壌環境を均一にした。5月末に播種し、秋に刈り取りを行い根や葉の形質を測定した。
主成分分析の結果、比根長(根長/根重)、根組織密度、根窒素濃度などがSLAともに第1軸に収斂したが、SLAと比根長の関係には大きなばらつきがあった。文献から共生菌根菌を調べると、SLAと比根長の関係は外生菌根菌と共生する種はアーバスキュラー菌根菌と共生する種の間で切片が大きく異なり、これがばらつきの原因だった。
葉形質と根形質の間には強い相関があったが、その関係は共生菌根菌の種類によって大きく分かれることが明らかになった。