| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-225  (Poster presentation)

都市鉄道敷の生物多様性への貢献:ススキクラス表徴種【A】
Contribution to biodiversity of urban railroads【A】

*川本我夢, 小池文人(横浜国立大学)
*Gamu KAWAMOTO, Fumito KOIKE(Yokohama National Univ.)

伝統的な里山景観である草原は、草刈など定期的な管理が行われることで、遷移が抑制されることによって成立する。しかし地域発展に伴う都市化とともに、①植物が存続できる生息適地の減少、②管理放棄地の増加、③強度の管理などの背景から、里山景観を構成する植物の生息地減少や地域絶滅が起きている。道路・鉄道軌道では、勾配を減らすために盛土・切土を行っており、広い法面空間が形成されている。道路・鉄道等の法面における植生は、安全上の問題から管理が必要であり、定期的な草刈が行われている。したがって、法面空間は里山の植物が存続できる空間となっている可能性がある。
本研究では都市鉄道敷の法面空間が、里山植物が存続する空間となっている可能性について検証する。相鉄本線、相鉄いずみ野線の全線を調査地に設定し、「鉄道敷」と「線路に平行するライン(上下線の2つ)」の3ラインにおいて、関東地方の里山景観を構成するススキクラス表徴種の分布調査を行い、出現率を比較した。
鉄道敷では、11か所でススキクラス表徴種が出現した。特にツリガネニンジン、ワレモコウ、オトコヨモギ、アキカラマツは、2か所以上で出現した。一方線路に平行するラインにでは、上り側において3か所でススキクラス表徴種が出現した一方、下り側では出現しなかった。これらの結果を用いた出現率の比較を行うために、実地調査の結果を用いて、1kmあたりのススキクラス表徴種の出現率について区間推定を行った。その結果、鉄道敷における出現率の方が、線路外と比べて有意に高いことが明らかになった。都市の鉄道敷はススキクラス表徴種が存続する空間として、都市の生物多様性に貢献していると考えられる。


日本生態学会