| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-229 (Poster presentation)
渡り性水鳥の生息地は人為的な土地利用へ転換されて世界的に急減しており、その個体数も減少傾向にある。水鳥の多くが採餌場所やねぐらなどの複数の水域を日々行き来する生態をもつことから、水鳥の保全においては生息地とその間の移動空間を合わせて考慮する必要がある。都市域の河川や湖沼、海域は水鳥にとって重要な越冬地の一つであり、東京都心部では隅田川やその支流の河川が生息地としてのみならず、移動経路としても重要であることが明らかになりつつある。そこで本研究では、河川に沿って日常的に移動することが知られている水鳥であるユリカモメ(Chroicocephalus ridibundus)に対してGPSロガーを用いた追跡を行い、移動経路として使われやすい河川区間の特徴の抽出を試みた。2020年度と2021年度の厳冬期(12月〜1月)に、東京都の隅田川下流部と千葉県の手賀沼にて合計27個体を捕獲し、GPSロガー(Druid Technology社のDebut Nano)を装着した。測位頻度は、充電状態が良好でかつ5m/sの速度を検知した際には1分間隔、それ以外の時は60分間隔とし、1分間隔で取得したデータを移動時のデータとして解析に用いた。隅田川下流の湾曲部を中心に河川から外れて陸上を通過する(ショートカット)ルートが得られたため、これらの湾曲部に対して選択されなかったルートを人工的に作成した。これらのショートカットルートと湾曲部の建物高などの環境条件およびショートカット距離(河川に沿って移動した場合の距離との差)を用いて、移動経路として河川を選択する条件を検討した。