| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-236 (Poster presentation)
都市公園は野生生物の生息地や逃避地となることで都市化の影響を緩和する効果が期待されている。しかし、公園の生物多様性保全機能を評価した先行研究では、多くが1ha以上の大規模公園を対象地に含んでおり、小規模公園に関する検証例はない。また、都市化が多様性に及ぼす影響についても、公園の面積のばらつきが評価を難しくしている。そこで本研究では、住宅地に数多く散在する小規模な「住区基幹公園」を調査ユニットに定め、周辺景観の都市化度および公園内の環境要因がゴミムシ類の種多様性および群集組成に及ぼす影響を分析した。その結果、(1) 都市化はゴミムシ類の多様性(種数、個体数、Shannon多様度指数)に負の影響を及ぼし、特に特定環境への依存性の強い捕食性種を減少させていた。また、都市化度が高い景観に立地する公園ほど、環境適応性の高いジェネラリスト種を主体とする種組成へ推移する傾向がみられた。(2) 公園内の環境要因として13変数の影響を分析したところ、(土壌含水比、植生の構造複雑性、開空率、公園内の舗装率からみて)総じて乾燥し、開放的な環境で特徴づけられる公園ほどゴミムシ類の種多様性が高かった。したがって、高度に都市化された市街地においても、公園内に開放的な環境を創出することでゴミムシ類の群集を維持できることが示唆された。(3) 本研究で確認されたゴミムシ類の種多様性を国内他地域での先行事例と比較したところ、トラップ設置1日あたりの捕獲種数は東京(0.049種)、大阪(0.002種)と比較して中程度(0.008種)となり、都市に散在する小規模公園が一定の生物多様性保全機能を有することが示された。以上より、生物多様性に配慮した都市づくりのためには大規模な緑地のみならず、数多く点在する小規模な緑地を考慮し、それらのネットワークを設計していくことが有効と結論された。