| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-239  (Poster presentation)

兵庫県北部の水田における農法の差異によるアゾラの分布状況【A】
Distribution of Azolla under different rice farming methods in Northern Hyogo Prefecture【A】

*宇田川卓義, 内藤和明(兵庫県立大・地域資源)
*Takuyoshi UDAGAWA, Kazuaki NAITO(RRM, Univ. Hyogo)

 兵庫県豊岡市では,生物多様性を高めコウノトリCiconia boycianaの餌となる生物を水田で増やす取り組みとして,環境創造型農業であるコウノトリ育む農法(以下:育む農法)が盛んに行われている。
 除草剤を75%低減あるいは使用しない育む農法では,冬期湛水や深水管理など水田雑草を抑制する様々な技術が用いられるほか,カエル類の変態時期を考慮して中干しを遅らせるなど,慣行農法と比較し,湛水期間が長いことが知られている。そのため,除草剤への感応性が高く湿潤な環境を好むアゾラAzollaにとっては,好適な環境である可能性がある。
 本研究では,アゾラの伝播しやすい環境及び出現しやすい環境を推定することを目的に,豊岡市域において,無農薬・減農薬・慣行農法の圃場を計579選定し,そこに生育するアゾラの分布・被度の調査および調査圃場の中心から半径200mおよび800m以内の景観解析を行った。
 慣行水田では272圃場中29,減農薬水田では78圃場中8,無農薬水田では229圃場中27圃場でアゾラの生育が確認され,多重比較検定を行った結果,無農薬と慣行農法水田の間でアゾラの生育の有無が有意に異なっていた。
 分布調査により得られた水田圃場におけるアゾラの被度を目的変数とし,調査圃場の農法と景観要素を説明変数とした一般化線形モデル(ゼロ過剰ポアソン分布)によるカウントモデルからは,当該圃場が無農薬, 近隣が水田環境, 周辺に無農薬水田や放棄水田等のアゾラの生育環境となりうる要素が多い場合にアゾラの被度が高いことが示唆された。他方,近隣にアゾラの被度が高くなりやすい無農薬圃場がある場合においても, 当該圃場が除草剤を使用しており,周辺が慣行農法が多い水田環境や乾燥した休耕田に囲まれた場合は,アゾラの被度が低いことを示唆していた。
 ゼロ過剰モデルも,カウントモデルと同様の傾向を示しており,アゾラの被度が高くなりやすい環境において,出現もしやすいことが示唆された。


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