| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-240  (Poster presentation)

都市近郊林の木本植物群集がもつ機能的多様性の評価【A】【B】
Functional diversity of woody plant communities in urban areas.【A】【B】

*東優樹(筑波大学)
*Yuki HIGASHI(University of Tsukuba)

都市近郊林を構成する木本植物群集の機能的多様性は、生態系サービスの質や量と深い関わりがある。しかし、都市化が進行した際の応答については知見が不足している。そこで本研究では、都市近郊林の木本植物群集がもつ種および機能レベルでの多様性の特徴を把握し、それに寄与する人為的要因の影響との関係を分析した。
 つくば市とその周辺部において、都市近郊にある孤立林24地点と、筑波山麓の連続性の高い森林(以下連続林)20地点に調査区を設置し、木本植物の種組成と多様性を調査した。木本植物は胸高直径(DBH)が2cm以上のものを成木層とし、種数とシャノンの多様度指数(H′)を求めた。またDBHが2cm未満のものは幼木層とし、種数のみを記録した。さらに種子散布型、生活形、葉形、開花期、果熟期の違いより、機能的多様性(Rao's Q)を算出した。その後、一般化線形混合モデルを用いて、都市化の指標となる半径2km以内の市街地面積、植栽針葉樹の割合、植生管理の有無および土地利用履歴と上記の多様度指数との関係を解析した。
 調査の結果、市街地面積が増加すると成木層の種数とH′は減少した。機能的多様性については、種子散布型および葉形の多様性が減少したが、全形質では変化は検出されなかった。一方、孤立林の幼木層では種数は高いものの、管理よって種子散布型と葉形の多様性が低下する傾向がみられた。正準対応分析を行ったところ、幼木層では都市化が進行した森林において、トウネズミモチやナンテンなど鳥散布の外来種や園芸種が多く出現する傾向にあった。また、孤立林の幼木層では種および機能レベルの双方で連続林よりもβ多様性が低かったことから、下層植生の均質化が起こっていることが示唆された。以上より、都市近郊林では都市化の影響を強く受ける幼木層において、非在来種や鳥散布種の出現により種レベルの多様性は高いものの、一部の機能の機能的多様性は低下していることが明らかにされた。


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