| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-243  (Poster presentation)

10年間での環境変化に伴う水田性カエル類の分布変化【A】
Change in distribution of paddy frogs in response to environmental changes over a 10-year period【A】

*村上龍登, 泉澤俊希, 丑丸敦史(神戸大学)
*Ryuto MURAKAMI, Tosiki IZUMISAWA, Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

 近年の都市化に伴い、都市域では人工地の増加による生息地の損失・改変が生じており、様々な生物群において多様性が減少している。特に両生類は生息地の環境変化による影響を受けやすいことが明らかになっており、都市化に伴う両生類の減少が世界各地で報告されている。一方で両生類は、それぞれの種が持つ種特性の違いによって、都市環境への耐性が異なることが示されている。水田性カエル類では伝統的水田環境への依存度が高く、幼生期間の長い種がより都市環境に対して脆弱であることが示唆されている。この時、都市化に伴い環境変化の進んだ水田では、都市環境に脆弱なカエル類ほど個体数がより劇的に減少する一方で、都市環境への耐性が高い種では、種間競争の低下を通じて都市部で個体数を増加させうる可能性がある。このような、都市化に伴う両生類の長期的な個体数変化を知ることは、将来的な両生類の分布を予測する上で重要であるが、検証した研究は非常に少ない。
 本研究では、阪神地域の水田118地点を対象に、2021年に水田性カエル類5種についてコールランク手法による準定量的な分布調査を行い、2011年に計測された同様のデータと比較することで、本地域での都市拡大が両生類へ長期的に与える影響を検証した。また、分布の年変動による過度な減少傾向が結果に反映されることを防ぐために、2022年に分布の再調査を行った。生息環境については、対象水田の環境として畦畔・水路の状態および近接林までの最短距離を定量し、周辺景観として調査地の中心から半径500m、1000mの範囲内にある緑地、農地、人工地面積を計測した。さらに、調査対象水田について、水田からの土地利用変化の有無も評価した。これらのデータを用いて、約10年間の分布変化に影響を与えた環境要因について解析を行った。
 発表では解析結果を踏まえて、都市化に伴う環境変化が各種の分布にもたらす長期的な影響と、その種間差について議論する。


日本生態学会