| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-247  (Poster presentation)

集水域の環境の違いが河川を介した溶存態・粒子態栄養塩のフローに与える影響【A】
The effects of differences in watershed environments on the flows of dissolved and particulate organic matters through the rivers【A】

*小林直樹, 太田民久(富山大学)
*Naoki KOBAYASHI, Tamihisa OHTA(Univ. Tyoama)

河川には陸域より種々の栄養塩が流入し、それらは河川を介して海洋へ運ばれる。陸域から流入した栄養塩は河川及び沿岸海洋生態系を支える資源として寄与し、さらに陸域-河川-海洋の一連の栄養塩フローは地球規模の物質循環の理解に必要不可欠である。河川を流下する栄養塩は溶存態(DIM/DOM)および粒子態(POM)で存在しており、集水域内の植生・土地利用、水理地質など様々な環境要因によりその流出量は変化する。しかし、これらの両者の栄養塩フローが集水域内の環境にどういった影響を受け、季節的にどのように変動しているか統合的に調査した研究事例は少ない。そこで本研究では河川に流入する栄養塩として、粒子態および溶存態の炭素・窒素に着目し、それら栄養塩が集水域内の環境にどのような影響を受け季節変動しているか調査した。2022年から富山県富山市を流れる井田川上流部の環境の異なる森林河川6カ所で河川水の採水および河川流下粒子状有機物POMの採集を行った。河川水の溶存無機炭素(DIC)・窒素(DIN)濃度、溶存有機炭素(DOC)・窒素(DON)濃度、ならびに河川を流下する粒子状有機物質から粒子状有機炭素(POM)・窒素(PON)濃度を求めた。さらにそれぞれの炭素・窒素濃度(mg/L)から流出量(g/day)を算出した。5月~11月のデータを計算した結果、森林河川を流下する炭素フラックスにおけるDIC、DOC、POCの割合は約90%、10%、1%、窒素フラックスにおけるDIN(硝酸態窒素)、DON、PONの割合はそれぞれ約75%、25%、0.1%であった。DICは河川水中のCa濃度と強い相関があり、CaCO3を多く含む母岩由来のCO2が多く流入していると考えられる。つまり森林河川におけるCNフラックスはDICおよびDINの割合が多く、DICの多くが母岩由来であることが示唆された。また溶存有機炭素や窒素濃度は気温、粒子態有機炭素や窒素濃度は落葉により変動する傾向がみられた。そのためCNフラックスには複数の環境要因が複合的な影響を与えていることが予想され、今後より詳細な調査が必要である。


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