| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-249  (Poster presentation)

冷温帯林の純一次生産におけるつる植物の寄与【A】
The contribution of lianas to net primary production in a cool temperate forest【A】

*谷岡庸介, 廣田充(筑波大学)
*Yosuke TANIOKA, Mitsuru HIROTA(University of Tsukuba)

熱帯林において、木本性つる植物が森林の炭素循環に無視できないほど大きな影響を与えることが明らかになってきている。一方で、温帯林では木本性つる植物はあまり注目されておらず、森林の炭素循環との関係も明らかになっていない。本研究は冷温帯林にて木本性つる植物が地上部純一次生産に及ぼす影響を明らかにした 。調査は長野県上田市に位置する筑波大学菅平高原実験所内のアカマツ林で行った。20 mまたは30 m四方の調査区をそれぞれ複数設け(合計0.64 ha)、樹木および木本性つる植物の地上バイオマス増加量とリターフォールを計測した。地上バイオマス増加量は、両者の生産期前後に幹直径を計測し、アロメトリー式を用いて生産期前後の地上バイオマスを推定し、その差分とした 。樹木のアロメトリー式は先行研究で開発されたものを使用し、木本性つる植物のアロメトリー式は本研究にて作成した。木本性つる植物を22個体を地際から採集し、幹直径と地上バイオマスの乾燥重量を計測し、幹直径と地上バイオマスの回帰式を作成した。リターフォールは、調査区内にリタートラップを設置し、2022年5月から11月まで定期的にトラップ内のリターを回収し計量することで求めた。リターは器官別に分け、さらにそれぞれの器官で木本性つる植物と樹木に分けた。本調査地では、期間中の地上バイオマス増加量のうち2.2%、およびリターフォールのうち12.5%を木本性つる植物が占めていた。一方、現存バイオマスのうち木本性つる植物が占める割合は0.9%であった。本研究によって、温帯林の純一次生産においても、木本性つる植物は熱帯林と同程度の割合を占めることが明らかになった。さらに、つる性木本は現存バイオマス量あたりの純一次生産量が高く、見かけのバイオマス以上に森林の炭素循環の大きな部分を担っていることが示唆された。


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