| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-251  (Poster presentation)

温暖帯に植生されたブナの生育状況【A】【B】
Tree growth of beech trees planted in a warm temperate zone【A】【B】

*舘野詩音, 上村真由子(日本大学)
*Shion TATENO, Mayuko JOMURA(Nihon University)

ブナ(Fagus crenata)は日本の天然林の17%を占める冷温帯を代表する樹種である。ブナは一般的に、吉良が提唱した暖かさ指数で45~85℃月の冷温帯に生育すると言われている。神奈川県藤沢市の日本大学生物資源科学部のキャンパスは、暖かさの指数が133.7℃月であり、ブナが分布するとされる一般的な暖かさの指数を上回る気象条件となっている。それにも関わらず、キャンパス内には植栽された6本のブナが生育している。本研究では、日本大学生物資源科学部のキャンパスに植栽されているブナと群馬県の冷温帯に生育しているブナの形状や現存量、成長量を比較することで、暖温帯に植栽されたブナの生態について調べることを目的とした。調査地は、神奈川県藤沢市亀井野にある日本大学生物資源科学部キャンパス(以後、藤沢キャンパス)と群馬県利根郡みなかみ町の日本大学生物資源科学部水上演習林(以後、水上演習林)である。藤沢キャンパス、水上演習林ともに胸高直径が20cm程度の6個体を対象とした。対象木の胸高直径と樹高を測定した。さらに、成長錐を用いて年輪の読み取りを行った。成長錐によるコアサンプルの採取は、地際から約1mの高さの2方向で行った。年輪幅は年輪幅測定装置を用いて0.01mmの精度で読み取った。藤沢キャンパスに植栽されたブナは、順調に肥大成長を行っており、冷温帯のブナよりも成長が早いことや、光環境を改善すると成長量が増えることからも、高温による成長の抑制が生じていないようだった。しかし、藤沢キャンパスのブナでは心材部の変色が見られたことから、高温環境が心材腐朽の進行が早めることで、枯死率が上昇するなどの弊害がでるかもしれないと考えられた。


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