| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-252  (Poster presentation)

標高の異なるブナ林における有機物分解への積雪の影響【A】
Beech leaf and wood decomposition varies with snow cover period【A】

*上野美桜, 上村真由子(日本大学)
*Mio UENO, Mayuko JOUMURA(Nihon Univercity)

地球温暖化は気温上昇だけでなく、積雪量や積雪期間にも影響を与えている。積雪は地表面への断熱効果があるため、環境要因や生物要因の変化を通して有機物の分解過程に影響を与える要因となる。積雪の減少が有機物分解に与える影響は、寒さの厳しい寒冷地においてはすでに行われている。しかし、日本の日本海側のような寒さが厳しくないが積雪の多い地域での研究例が少ないことから、この様な地域での積雪の減少が有機物分解に与える影響が不明である。そこで本研究では、落葉と材を対象に、①積雪が分解者微生物の量や種類に与える影響の評価と、②冬季の有機物分解速度の制御要因を明らかにすることを目的とした。調査地は、群馬県利根郡みなかみ町にある日本大学水上演習林の標高860mと、新潟県南魚沼郡湯沢町にある苗場国有林の標高550m・900m・1500mの4試験地である。ブナ落葉5gと角材40gを目の粗さが50μmのメッシュバックにそれぞれ入れ、2021年春に設置し、積雪前の2021年秋と積雪後の2022年春に回収した。試験地から回収した落葉と材サンプルは、リターバッグを除いて生重を測定した後に、凍結乾燥して乾燥重量を測定した。分解期間と重量変化から分解速度を調べた。乾燥させたサンプルを粉砕しDNAを抽出した。定量PCR法を用いて菌類と細菌類のDNAのコピー数を測定した。菌類のみアンプリコンシーケンスによって菌類のOTU数と相対優占度を求め群集構造を調べた。本研究により、積雪が菌類や細菌類のDNAコピー数やOTU数、群集構造に影響を与えること、有機物の種類によって影響の大きさが異なることが明らかになった。積雪下でも分解が進むことから積雪による断熱効果の有効性が明らかになり、既往研究と同様の結果となった。一方で、比較的温暖な多雪地帯での特徴として、融雪後の湿潤条件と急激な温度上昇による有機物分解の促進が示された。


日本生態学会