| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-260  (Poster presentation)

コナラ二次林におけるナラ枯れ後の時間経過に伴う葉リター特性の変化【A】
Temporal variations of leaf litter traits after Japanese oak wilt in a secondary deciduous forest dominated by Quercus serrata【A】

*勝島可奈子(玉川大・院・農), 湯沢敬佑(玉川大・院・農), 杉崎義和(玉川大・農・環境農), 関川清広(玉川大・農・環境農), 友常満利(玉川大・農・環境農)
*Kanako KATSUSHIMA(Tamagawa Univ. Agr.), Keisuke YUZAWA(Tamagawa Univ. Agr.), Yoshikazu SUGISAKI(Tamagawa Univ.), Seikoh SEKIKAWA(Tamagawa Univ.), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa Univ.)

 落葉落枝(リター)の量や質は,森林生態系の物質循環に大きな影響をもつ.温帯落葉広葉樹林においては,リター量の約8割を葉リターが占め,ほとんどが秋期の落葉期に生じる.近年,関東地方のコナラなどの落葉広葉樹林において,ナラ枯れと呼ばれるナラ類の集団枯死が頻発している.枯死木の葉は萎凋褐変して樹上にとどまり(以下ナラ枯れ葉),次第に落葉するため,健全木主体の林分と比べて,リターフォールの季節性や葉リターの質は異なると考えられる.本研究では,ナラ枯れ木と健全木のリター量と季節性,リターの窒素(N)含有率の違いを明らかにし,ナラ枯れが生態系の物質循環に与える影響について議論した.
 東京都町田市玉川大学キャンパス内のコナラ二次林において,ナラ枯れの程度が異なる2林分(2割・6割枯死区)を調査区とした. 2022年3月から2023年2月にかけて,リタートラップ(n=3)を用いてリターを採取した.これらを健全葉とナラ枯れ葉に分け,乾燥重量(DW)とN含有率を測定した.
 年間リター量は両区とも約2 t DW ha-1であり,2割枯死区の方がやや多かった(ns).両区において落葉期に年間量の60~90%が生じ,そのうち9割が健全葉であった.夏期のリター量は年間の数~20%を占め,この時期はナラ枯れによる枯死が最盛期であるため,夏期リター量の8割がナラ枯れ葉であった.リターNは,健全葉では落葉期にかけ2%から1%程度まで減少したが,ナラ枯れ葉では通年で2%程度が維持された.リターフォールによる土壌へのN供給量は,両区ともに約20 kg N ha-1と推定され,2割枯死区では40%,6割枯死区では25%をナラ枯れ葉が占めた.ナラ枯れによる年間リター量への影響は小さいが,高Nリターを供給すること,リターフォールの季節性が異なることから,生態系窒素循環に影響を与えることが示唆された


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