| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-261  (Poster presentation)

落葉広葉樹林におけるカブトムシ(Trypoxylus dichotomus)幼虫のリター資源利用様式【A】【発表取消/Cancelled】
Litter resource usage patterns of beetle larvae in deciduous broadleaf forests【A】【発表取消/Cancelled】

*飯島涼, 友常満利, 関川清広(玉川大学・農・環境農)
*Ryo IIJIMA, Mitsutoshi TOMOTSUNE, Seikou SEKIKAWA(Tamagawa Univ.)

土壌動物は有機物の分解において重要な役割を果たしている.その中でも特に,大型土壌動物のカブトムシ幼虫は摂食による直接的な有機物の分解に加え,破砕や排泄を通してその後の微生物の有機物の分解に間接的に影響を与えていると考えられる.本研究では葉リターと木質リターを餌材とした飼育実験を通じて,カブトムシ幼虫のリター摂食速度を明らかにし,カブトムシ幼虫のリター資源利用様式と有機物分解に対する役割について議論した.
葉リターと木質リターを餌材として,カブトムシ3齢幼虫の個体密度(0~3個体)を変えた飼育実験を行った.分解が進んでいない有機物(未分解物)と細かく破砕された有機物(破砕物),排泄物の実験前後の量的変化を測定し,幼虫の1日当たりの摂食速度を算出した.さらに,飼育実験終了時に残存した有機物からのCO₂放出速度(分解呼吸速度)を測定した.
本研究の結果,幼虫の摂食速度は葉リターに比べて木質リターの方が1.1倍ほど速かったが,有意な差は認められなかった.また,両リターともに1個体での飼育下の摂食速度が最も速かった.幼虫1個体の摂食速度は,代表的な土壌動物であるミミズと比較すると10倍程高い値であった.一方,残存した有機物の分解呼吸速度は,幼虫が存在していたことにより高くなる傾向があったが,有意な差は認められなかった.また,未分解物・破砕物の量的変化から,葉リターでは未分解物を,木質リターでは破砕物を優先的に摂食する傾向が観察された.以上のことから,土壌動物の中でもカブトムシ幼虫は,葉リター・木質リターどちらも同程度に摂食・分解するといったリター資源利用様式を持ち,1個体の能力的にはミミズよりも高いこと,生態系改変者としての微生物への影響は限定的であることが示された.


日本生態学会