| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-265 (Poster presentation)
土壌動物は直接的に枯死有機物を摂食・分解するだけでなく,破砕・排泄などにより有機物の形質を変化させ,その後の微生物による分解を間接的に促進させる.本研究では等脚類であるオカダンゴムシとワラジムシに着目し、葉リターの摂食速度を明らかにするとともに生態系内における有機物分解に対する寄与について議論した.
調査は東京都町田市玉川学園内の林分を対象とした.オカダンゴムシとワラジムシに餌試料として6種の葉リター(コナラ,クヌギ,スギ,ヒノキ,シラカシ,アズマネザサ)を与え,2週間の飼育実験から葉リターの摂食速度を測定した.また、餌試料と各飼育下での排泄物の炭素・窒素含有率を測定した.さらに各対象林分において個体密度をハンドソーティング法により測定した.
本研究の結果,オカダンゴムシよりもワラジムシの方がほとんどの葉リターにおいて,バイオマス当たりの摂食速度が高い傾向にあった。これは,ワラジムシの方が素早く行動し,エネルギーの消費速度が高いためと考えられる。また,これらの摂食速度は共通してコナラやクヌギなどの落葉広葉樹の方で高い傾向にあり,葉の柔らかさや厚さなどの外部形態的な形質が起因すると考えられる.6種の葉リターの炭素・窒素含有率は,排泄物の値のばらつきが小さく,摂食・排泄行為を通して有機物の質が均質化されていた.個体密度においては,ワラジムシの方がどの林分においても高い傾向にあり,両者が好む土壌の水分環境の違いが影響していると考えられた.また,両者ともに摂食速度の高かったコナラやクヌギの林分において,個体密度も高かった.これらから推定された単位面積当たりの有機物分解速度は、代表的な土壌動物であるミミズの5%程度であった.以上のことから、等脚類は未分解リターを積極的に摂食する有機物分解の初期段階に寄与し,生態系内の落葉変換者として重要な役割を果たしていることが示唆された.