| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-270 (Poster presentation)
土壌には様々な土壌動物が生息し,落葉・落枝などの植物性リター,また動物遺体・排泄物などの動物性リターを摂食・分解している.温暖な地域に生息する森林性のサツマゴキブリは,これらのリターを餌資源とする大型の土壌動物と定義でき,その体長や目撃頻度などからリター分解に対する影響は大きいと予想される.そこで本研究では,サツマゴキブリの生態的特性とリター分解への影響について明らかにすることを目的とした.
調査は鹿児島県南さつま市の暖温帯林と柑橘果樹園の隣接地周辺で行った.生態的特性としては,環境選好性・日周活動性・個体密度をルートセンサス法およびコドラート法により調査した.リター分解への影響として,短期の飼育実験を行い,リターの摂食速度および餌資材・排泄物の炭素・窒素含有率の測定を行った.
その結果,サツマゴキブリは林縁の落ち葉溜まりや人工物瓦礫があるような環境で多く目撃された.日中にはそのような場所に潜伏,夜間には潜伏場所から出て周辺で活動する様子が観察された.個体密度は林縁の方が林内よりも有意に高かった.これらは採餌や天敵からの回避のしやすさなどに起因した特性であると考えられる.リターの摂食速度においては,落葉の方が朽木などよりも好んで摂食され,さらに植物性リターよりも動物性リターの方が摂食速度は速かった.これはリターの柔らかさや窒素含有率などの形質の違いに起因していると考えられた.これらの結果から推定された単位面積当たりのサツマゴキブリによるリター分解速度は,代表的な土壌動物のトビムシ類やダニ類などよりも2倍ほど高く,リター分解に重要な役割を果たしていることが示唆された.