| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-275 (Poster presentation)
動物の種多様性の緯度勾配は、陸地と海に生息する様々な分類群を対象として研究されており、一般に高緯度よりも低緯度で種数が多いことが知られている。しかし、陸地の研究は地上の動物が対象であることが多く、土壌動物に焦点が当てられることは少なかった。地上の動物と土壌動物では分散能力や生息環境が異なるため、土壌動物の群集形成過程が地上の動物と一致するとは限らない。そのため、地中の動物の群集形成過程、さらに種多様性の緯度勾配を知るためには土壌動物を対象にした研究が必要である。
本研究では、土壌動物の代表として大型で観察しやすいフトミミズ科(Megascolecidae)のミミズを用いた。ミミズは中緯度地域において多様性が高いことが知られているため、調査は中緯度地域に属する日本で行った。
種多様性の緯度勾配に影響する要因として、本研究では気温・降水量・積雪深・生息環境の連続性・生息地の安定性の5つの要因について検証した。126地点から採集された3490個体のミミズを用いて解析した結果、α多様性・β多様性・γ多様性には高緯度よりも低緯度で多様性が高いという一般的な緯度勾配が生じており、α多様性の勾配には積雪深が、β多様性の勾配には気温・降水量・生息環境の連続性が影響を与えていることがわかった。
次に、ミミズの生態が緯度分布範囲に影響を与えているかを検証した。ミミズは主に有性生殖を行うが、一部の種は単為生殖を行う。また、地表性種と地中性種に大きく分けることができる。これらの影響を検定した結果、繁殖様式が緯度分布範囲に影響を与えており、単為生殖のミミズが広い緯度分布範囲に生息していることがわかった。これらのことから、日本では単為生殖の種が厳しい環境である高緯度地域に分布拡大したために、高緯度よりも低緯度で多様性が高いという緯度勾配を形成していることがわかった。