| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-276 (Poster presentation)
マダガスカルは一万種以上の植物種のうち80%が固有であるなど世界的に特筆すべき維管束植物の多様性を誇る。しかし、種の分布やハビタットなど基礎的な情報が不足している状況であり、特に西部乾燥林での植物生態学的な研究例はマダガスカル国内の熱帯雨林と比べて少ない。マダガスカル北西部に位置するAnkarafantsika国立公園は、7ヶ月以上(4~11月)の乾季のもと、原生的な熱帯乾燥林が残されている。公園内の研究調査区画であるJardin Botanique A (JBA)では石英質の白砂の貧栄養の丘の上に、樹高8~15 mの常緑落葉混交林が成立し、ラン科着生植物(着生ラン)もよく見られる。そこで本研究は、これまでマダガスカル乾燥林で研究されてこなかった着生ランの種類と出現頻度、また、ホスト木との関係など基礎的な情報を明らかにすることを目的とした。2021年の乾季にあたる7~8月にJBA林内に設置された通路を利用しルートセンサスを行い、左右約1mを観察対象として、出現した全樹種と全着生ランの種類を記録した (JBAの区画内の約25 haにおけるルート総計5.8 km)。これに加えて着生ランが確認されたホスト木についてはその樹種と着生ランの種類、胸高直径を目測で記録した。ルートセンサスの結果、観察対象となった樹木は105種 であり、着生ランは5属8種がホスト木46種から確認された(Aerangis, Angraecum, Bulbophyllum, Microcoelia, Vanilla)。マダガスカル東部の熱帯雨林に比較して着生ランの出現種数は低いが、アフリカ大陸の乾燥林で行われた同様の研究では降雨量が着生ランの多様性の制限要因と指摘されており、世界の他地域での乾燥林との比較は今後必要であろう。ホスト木種との特異性についてはMicrocoelia, Vanilla, Bulbophyllumの間に異なる傾向が見られた。特にBulbophyllumにおいては特定の2樹種に集中的に着生しており、ホスト木への特異性が示唆される結果となった。