| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-277 (Poster presentation)
世界中の土壌に生存するトビムシは土壌環境の指標動物として優れており、フィールドにおいて捕獲されたトビムシの種数や個体数の時空間的な変化を調べることで、人間の活動による攪乱や気候変動等が対象地域の土壌環境に与える影響を解析することができる。しかしながら、トビムシ個体数の計数には多大な労力と時間並びに専門知識を要する。これまでに画像処理や深層学習を用いた物体検出技術を用い、トビムシ個体数を自動計数するシステムが開発されてきた。しかしながら、それらのシステムは主にシャーレ内に存在する多くても数百匹のトビムシ計数が適えば良い室内実験での利用が前提であり、フィールドにおいて採集される数千から数万匹ものトビムシ計数には適用が難しい。本研究では、深層学習ネットワークを用いた物体検出モデル(YOLOv5)をベースとし、フィールド由来のトビムシ群を撮影した画像について、トビムシの形態識別に基づき個体数の自動計数を行うシステムを開発した。SLAMトラップにより捕獲したトビムシを専用容器に入れてスキャナ装置で撮影し、40枚の画像を取得した。そのうち、5枚を学習データとして、トビムシの形態的特徴に基づき6グループに分けて学習させ、そのモデルを用いて40枚全ての画像についての個体数を予測した。この処理においては、使用するコンピュータが一度に扱える最大のサイズにスキャナ画像を分割する必要があり、その際、境界部分の12.5%をオーバーラップさせて分割し輪郭検出や塗りつぶし処理等を行うことで、トビムシの体が境界部で分断され二重に検出されることを回避した。検証画像におけるトビムシの個体数をモデルが予測した結果と手動で計数した結果との相対誤差を各画像で求め、相対誤差の平均値を既存の計数システム(Marcal et al., 2006, Caridade et al., 2011)と比較した。その結果、本システムにおける相対誤差の平均値は2.75%であり、Marcalらの5%及びCaridadeらの4.6%と比べても良い結果が得られた。