| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-279 (Poster presentation)
河川水中の微生物群集は、水質や季節、空間距離などに応答し、時空間的に変動することが知られるが、これらの要因は互いに影響を及ぼすことが多く、要因間の相対的な影響については明らかではない。また、水中の細菌では粒子付着性細菌(PA)と水中浮遊性細菌(FL)などの存在形態で異なる群集組成を示すことが知られるが、河川源流域で細菌や真菌の様々な存在形態の群集組成に影響する要因を包括的に調べた研究はない。そこで、本研究では、空間的に近い小集水域間で水質が異なり、水質の空間的な異質性が高い河川源流域で水中の微生物群集を、PAとFLに区別し、それぞれの群集組成に影響する要因の相対的な重要性を明らかにすることを目的とした。京都府北部の冷温帯林の源流部の29地点で、異なる季節(5月、7月、10月)に調査した。渓流水を異なる孔径のフィルター(3.0μm、0.22μmで捕集されたものをそれぞれPA、FLとした)で濾過してDNAを抽出し、細菌と真菌の群集組成をアンプリコンシーケンスにより解析した。また、水質(pHや無機イオン)の測定も行った。その結果、細菌と真菌ともにPAとFLでは群集組成が異なり、季節によっても異なった。また、真菌のPAの10月でのみ、空間距離の影響が見られた。水質と季節が群集組成の変動に与える相対的な影響をdb-RDAに基づくVariation partitioningにより推定した結果、細菌では季節と水質が同程度の影響を与え、真菌では季節が水質よりも相対的に大きく影響した。また、細菌と真菌ともに季節を通じて、土壌でのイオン交換反応の影響を受ける水質項目(pHやMg2+など)が群集組成の変動と関係していた。以上から、細菌群集では、季節や水質の変動に応答したパターンが形成され、真菌群集では、水質よりも季節の変動に強く応答したパターンが形成されることが示唆された。