| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-281 (Poster presentation)
近年急速に生物多様性が減少するなかで、生物多様性が生態系機能に与える影響を理解することは重要である。生物群集が駆動する生態系機能は一つではなく、同時に複数の機能が駆動される。このように生態系が複数の機能を同時に維持する能力を「多機能性」という。多様性が変化すると多機能性も変化することが知られており、その関係は「生物多様性-多機能性関係」と呼ばれる。最近の研究では、生物間の相互作用がこの関係に影響することが知られているが、既存のデータに基づいたメタ解析によるものが多く、実験的に相互作用の影響を調べたものは少ない。また、多機能性を調べる実験において、生態系の一部を隔離し生態系を再現したメソコズムの有用性が示されている。そこで本研究では、生物多様性-多機能性関係に対する捕食者の影響を実験的に調べることを課題として、水草と捕食者としてメダカをもちいた淡水メソコズムによりその検証を試みた。水草1種のみ、2種混合、3種混合、それぞれメダカありなしを組み合わせて42のメソコズムを設定し、各機能群のバイオマスや水質などの生態系機能を測定し、多様性-多機能性関係を評価した。しかし、実験中に水草3種のうち1種が何らかの理由で消滅したため、水草2種の組み合わせについて、結果を報告する。水草多様性とメダカの存在は、動物プランクトンの個体数に顕著な影響をあたえ、さらにいくつかの水質に影響していた。この結果をもとに、多機能性の解析をしたところ、設定する閾値により多様性―多機能性関係のパターンが大きく変化することがわかった。また、水草多様性と捕食者であるメダカの存在が多機能性に影響することが確認できた。