| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-293  (Poster presentation)

南部オホーツク海における海棲哺乳類の分布【A】【B】【E】
Distribution patterns of marine mammals in the southern Sea of Okhotsk【A】【B】【E】

*古巻史穂(北海道大学), 李何萍(京都大学), 三谷曜子(京都大学)
*Shiho FURUMAKI(Hokkaido Univ.), Heping LI(Kyoto Univ.), Yoko MITANI(Kyoto Univ.)

北海道の南部オホーツク海沿岸は生産性・種多様性が高く,海棲哺乳類が季節的に分布する.特に春期は,季節性海氷由来の植物プランクトンブルームが発生し,高次捕食者に寄与すると考えられている.海棲哺乳類がどのように本海域を利用しているのかを明らかにすることを目的として,船からの目視調査と計量魚群探知機による音響調査を行い,海棲哺乳類の分布と海洋環境との関係について調べた.

2021, 22年4–5月に研究船新青丸からの目視調査と,計量魚群探知機による音響調査を実施した.アッパーブリッジやブリッジから双眼鏡を用いて海棲哺乳類を探し,発見位置を記録した.目視調査結果はQGIS3.22.12を用いて解析を行った.発見場所の海洋環境(衛星海表面水温,衛星クロロフィルa濃度,水深,距岸距離,海底傾斜角等)を調べ,航路上の海洋環境と比較することで分布に影響を与える環境要因を明らかにした.

目視調査では,イシイルカ,シャチ,ナガスクジラ,ミンククジラ,ツチクジラが見られた.同海域で夏期に行った調査に比べ,ハクジラ類の発見が少なく,ヒゲクジラ類の発見が多かった.特に,知床半島西岸ではナガスクジラやミンククジラなどのヒゲクジラ類が多数集中する海域が存在した.この海域は,西から東に水深が深くなり,海底傾斜が急な場所であったため,海底地形が分布に影響している可能性が考えられる.音響調査では,プランクトンの反応を示す120 kHz,魚類の反応を示す38 kHzともに今回調査を行った日本海側と比較して,知床半島の両岸で大きな反応がみられた.同様に基礎生産量を示すクロロフィルa濃度も他海域日本海側と比較してオホーツク南部海域は高い値を示していたことから本海域の餌環境の高さが海棲哺乳類の集中分布に寄与していることが考えられる.


日本生態学会