| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-300 (Poster presentation)
生物の体サイズは、地理的または空間的に変異することがあり、これらの変異のパターンや要因を解明することは、その種の生態や進化的背景を理解するうえで重要である。外温動物であるヘビ類は、都市部や島嶼などの環境で種内における体サイズ変異が確認されており、複雑なパターンや傾向がみられる。本研究では、新潟県における都市部(鳥屋野潟公園)・非都市部(出雲崎町)・島嶼部(佐渡島)の3地域に生息するシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)の体サイズについて比較を行い、環境要因である熱環境や餌資源、捕食圧が体サイズに与える影響について調査した。さらに、ヘビ類が示す逃避反応から、人間自身の行動がヘビ類に与える影響についても評価した。その結果、都市部では体サイズが他の2地域より大きく、非都市部と島嶼部では違いはみられず、標準的な体サイズであった。熱環境では、地域間で差はなく、体サイズとの相関もみられなかった。餌資源では、胃内容物の観察から、都市部では主に外来カメ類の卵、非都市部と島嶼部では主にカエル類を捕食しており、胃内容物を持っていた場合の1個体あたりの平均胃内容物数は都市部で最も多い傾向がみられた。安定同位体分析からは、ネズミ類の利用も各地域で推定された。捕食圧と人間に対する忌避行動に関しては、シマヘビの逃避反応や身体の損傷率から評価を行い、都市部で捕食圧が高く、島嶼部で捕食圧が低いことが示唆された。また、人間の直接的な行動による体サイズへの影響はみられなかった。本研究より、新潟県の都市部においてシマヘビの大型化が確認され、その大型化には熱環境や捕食圧よりも餌資源の違いによる影響が大きいことが示唆された。都市部のシマヘビの主な餌資源はカメ類の“卵”であり、さらに、一度に多くの量を摂食できることから、餌資源の捕食効率や栄養素的メリットが今回の大型化の直接的要因となっている可能性がある。