| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-316  (Poster presentation)

佐渡島の山地と平野間におけるモリアオガエルの形態変化と遺伝子流動【A】
Morphological changes and genetic flow of Zhangixalus arboreus between mountain and plain areas on Sado Island【A】

*藤田健(新潟大学), 田口裕哉(東北大学), 澤田聖人(筑波大学), 陶山佳久(東北大学), 阿部晴恵(新潟大学)
*Takeshi FUJITA(Niigata Univ.), Hiroya TAGUCHI(Tohoku Univ.), キヨト サワダ(Tsukuba Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.)

島嶼⽣態系は、限られた⽣物種で構成されていることが多いため、空いている環境を利⽤することによりニッチを拡⼤している種が多く存在する。ニッチ拡⼤に伴い分化に⾄ったとされる種も多く報告されていることから、新たな環境に適応する形質の変化や遺伝的分化を検証することは、進化学的に重要な情報となり得る。本研究の対象種であるモリアオガエル(Zhangixalus arboreus)は、⼀般に森林性のカエル類として知られており、主な繁殖地は⼭間部の⽌⽔域であるとされている。しかし、佐渡島では平野部の⽔⽥地帯においても広域的にその生息が確認されている。したがって我々は、モリアオガエルが島嶼特有の条件下において平野部の⽔⽥地帯へとニッチを拡⼤しているのではないかという仮説をたてた。さらに、平野部(国仲平野)の⽔⽥地帯は両端にある⼭地(⼤佐渡、⼩佐渡⼭地)から⼈家等で隔離されているため、個体群間に遺伝的隔離が生じている可能性が⾼い。そこで本研究では、佐渡島内においてモリアオガエルを網羅的に採取し、その形態形質と遺伝的組成を解析することで、本種のニッチ拡大に伴う形質変化と遺伝的分化の可能性について検証した。形態形質としては、体サイズに加え、森林環境に適応的であると考えられる水かきの発達を腹面画像から計測して比較した。その結果、体サイズは山地に対して平野部の個体群において有意に小さい傾向にあった。また、水かきの発達と体サイズとの間に相関はなく、平野部の個体群において水かきの発達度は有意に低い傾向にあった。これらのことから、本種における水かきの発達は森林環境に適応的であり、佐渡島における平野部へのニッチ拡大に伴い、日本本土における近縁種であるシュレーゲルアオガエル(Z. schlegelii)のように平野部水田環境に適応した収斂が起こりつつあることが示唆された。景観と遺伝的組成との関係や景観間の遺伝子流動の有無については、本ポスター発表にて報告する。


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