| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-317  (Poster presentation)

日本産陸産貝類における網状進化: 系統解析の落とし穴【A】
Dynamic reticulate evolution in terrestrial snails: A pitfalls in phylogenetic analysis【A】

*石井康人(東北大学), 伊藤舜(東北大学), 亀田勇一(国立科学博物館), 髙野剛史(目黒寄生虫館), 脇司(東邦大学), 千葉聡(東北大学), 平野尚浩(東北大学)
*Ishii YASUTO(Tohoku Univ.), Shun ITO(Tohoku Univ.), Yuichi KAMEDA(National Mus. of Nat. and Sci.), Tsuyoshi TAKANO(Meguro Parasitological Museum), Tsukasa WAKI(Toho Univ.), Satoshi CHIBA(Tohoku Univ.), Takahiro HIRANO(Tohoku Univ.)

近年の研究によって浸透交雑が動物においても植物においても進化的に重要な役割を果たすことが明らかとなりつつある。その重要性にもかかわらず,浸透交雑の頻度や浸透交雑を開始させる要因は多くの分類群で明らかではない。そこで本研究では陸産貝類であるミスジマイマイ種群において浸透交雑がどのくらいの頻度で起きたのか,および浸透交雑を開始した要因を明らかにすることを目的とした。生息地全域を網羅するように196地点から197個体をサンプリングし,ddRAD-seqによりゲノムワイドSNPsを取得した。集団遺伝学的解析によってミスジマイマイ種群は地理的に隔離された12の遺伝的グループに分けられることが明らかとなった。そしてそれらの遺伝的グループの間には交雑帯が形成されていたおり、地理的障壁の消失が交雑帯の形成の始まりに関与していることを示唆していた。また,これらの交雑の一部は人為的導入や河川改修によって開始したと考えられた。さらに系統ネットワーク解析により地理的に近接した遺伝子集団間で過去に3回の遺伝子流動が存在したことが明らかになった。これらの結果からミスジマイマイ種群において遺伝子流動が地理的障壁の消滅や人為活動により開始したと考えられた。


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