| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-329 (Poster presentation)
温暖化が生物にもたらす影響の側面のひとつに,生物の侵入(北上)が挙げられる.新たな生物の侵入は,今まで出会うことのなかった生物同士を遭遇させることで,侵入地における生態系の安定性や相互作用に大きな影響を引き起こす.さらに,温暖化由来の侵入種が侵入した地域の在来種は,生物侵入の脅威だけでなく,温度上昇の影響にも晒される.このため,在来の生態系は人為起源の外来種より,大きく,かつ複雑な影響を受ける可能性がある.しかし,外来生物分野ではこれまで,人為起源の外来種による生態影響は盛んに評価されてきたのに対し,温暖化の進行に伴って自然発生する生物侵入の影響は,長らく見過ごされてきた.また,外来種の侵入が温度を問わず,非連続的に広がっているのに対して,温暖化に起因する生物侵入は,低緯度地域から高緯度地域に向けて連続的(面的)に広がっている.そのため,温暖化由来の侵入種の脅威にさらされる在来種は,同一種内でも,高緯度地域の集団ほど温度耐性に乏しい可能性は否定できない.温度上昇と生物侵入が同時に在来種に作用することを考慮すると,在来種が受ける負の影響は,温度耐性が高い低緯度地域集団よりも,今後新たに侵入種と対峙すると予想される温度耐性が低い高緯度地域集団の方が大きくなると考えられる.そこで本研究では,温暖化にともなって北上(侵入)する侵入種の生態リスクを解明すべく,ベニトンボ(温暖化由来の侵入種)と緯度の異なるシオカラトンボ集団(在来種)をモデルに,温暖化由来の侵入種に対する在来種の生物抵抗性について,温度耐性の観点から集団間で比較する.本発表では,これまでに得られた結果の一部を報告する.