| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-331  (Poster presentation)

外来植物駆除で植生は回復するのか?小笠原諸島兄島の事例【A】
Will extermination of non-native plants restore vegetation? Case Study of Anijima, Ogasawara Islands.【A】

*瀬戸智大(横浜国立大学大学院, 日本森林技術協会), 小池文人(横浜国立大学大学院)
*Tomohiro SETO(Yokohama National Univ., JAFTA), Fumito KOIKE(Yokohama National Univ.)

小笠原諸島では約10年前から固有森林生態系保全のための外来植物駆除対策が実施されている。特に兄島は原生的な乾性低木林が残されているため保全価値が高く、重点的に対策が進められてきた経緯がある。本研究では、兄島における主要な外来植物種の生育環境と侵入ステータスおよび外来植物駆除後の回復状況を解析した。
兄島において外来植物6種で生育環境と侵入ステータスの解析を行った。どの種も小笠原諸島への導入後100年以上が経過している。CARモデルにより環境と空間的自己相関を同時に解析し、空間的自己相関の効果が大きかった種を分布拡大中、環境のみで説明された種を分布拡大が飽和したと判断した。分布拡大中の種はオオバナノセンダングサ、キバンジロウ、ギンネム、シチヘンゲで、トクサバモクマオウとリュウキュウマツは拡大が飽和していた。
兄島では本来裸地であった場所の一部が外来種の侵入で高木林となっている。外来植物が蔓延する前の植生であると考えられる1935年に調査された植生図も存在するが空間精度が低いため裸地とされた地域にも地形的に在来樹林が混在する。そこで1935年の植生カテゴリーを景観としてあつかい、景観内の様々なタイプの在来植生の調査票を目標植生グループとした。植生調査による主成分2軸と階層被度1軸の3次元空間上で目標植生グループと駆除事業地点との距離を計測することで外来植物駆除の効果を把握した。今回は兄島の特徴的な景観であるシマイス型乾性低木林景観について解析を行った。シチヘンゲ駆除後は林冠が疎開し下層に在来種エダウチチヂミザサやオキナワテイカカズラが繁茂して目標植生から遠ざかる様子が確認された。外来植物駆除は一時的に林冠ギャップを生じさせるため下層植生が繁茂するが、繁茂したのは在来種であったため今後は目標植生に向けた植生遷移も期待される。


日本生態学会