| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-335 (Poster presentation)
外来哺乳類であるアライグマやハクビシン,クリハラリスは,鳥類の卵の主要な捕食者であることが知られている.しかし,これら3種を同時にモニタリングし,鳥類の卵への捕食圧を定量的に明らかにした研究は限られている.本研究では,3種が同所的に生息する神奈川県二子山山系において,鳥類巣への捕食圧の指標として,卵の生残率(2週間の捕食回避率)を実験的に評価した.代表的な営巣環境である樹上と藪,地上にウズラの卵を入れた擬巣を設置し,自動撮影カメラで捕食者を特定した.これらの営巣環境を共変量として生存時間解析(time-to-detection analysis)を行い,各種による捕食タイミングをモデリングした.さらに,2週間以内に捕食されなかった擬巣は,イベントがそれまでに起こらなかったデータ(打ち切りデータ)として扱った.外来種によって捕食圧がどれだけ増大しているかを調べるために,1. 在来・外来問わず,いずれかの動物が捕食したタイミングをイベント発生(いずれの動物にも捕食されなかった場合を打ち切り)とした解析,2. 在来種が捕食した場合のみイベント発生(外来種が捕食した場合は,そのタイミングを打ち切り)とした解析,3.クリハラリス以外が食べた場合をイベント発生(クリハラリスが捕食した場合は,そのタイミングを打ち切り)とした解析の3つを行った.1と2を比較することで,外来種の捕食の効果,1と3を比較することでクリハラリスの捕食の効果を定量化できる.これらの結果,外来種不在下(79.5%)では,存在下(42.5%)よりも生残率が大きく上昇することが分かった.クリハラリスのみが不在の場合も,72.3%まで上昇することが推定された.また,営巣環境による生残率への影響は検出されなかった.クリハラリスは樹上性で高密度に生息し,3次元的に動き回るため,巣に遭遇する確率が高いと考えられる.外来種による鳥類の卵への捕食圧を緩和するためには,クリハラリスの駆除を優先的に行うべきである.