| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-339 (Poster presentation)
世界自然遺産に登録されている奄美大島では、野生化したイエネコ(以下、ノネコ)が森林内で希少哺乳類を捕食している(Shionosaki, 2015)。安定同位体を用いた研究では、森林内ノネコ集団の一部はペットフードなどの人為資源に依存していることがわかっている(伊澤、修士論文)。これを受けて、環境省や自治体は森林でのかご罠によるノネコ個体の捕獲と、集落でのTNR(不妊化処置)及び適正飼養の周知という対策を講じている。集落での餌やりは短期的に集落に留まる個体を増やす効果と、長期的には繁殖率の向上などを通じて森林へ流入する個体数を増やす効果を併せ持つと考えられる。そこで本研究では人為資源供給の程度と森林へ流入する個体数の空間パターンを明らかにすることを目的とする。
解析にあたっては、流入源としてTNR事業で確認されたイエネコ個体数を集落毎に集計した。またTNR事業で確認されたのちに森林内のかご罠やカメラで捕獲・撮影されたノネコ64個体を流入個体とみなして、カメラ毎に撮影頻度を集計し、非TNR個体との比較を行った。また人為資源供給の程度に関しては、集落内でイエネコに餌やりを行っていた人数を指標として用いた。データについては環境省及び自治体の事業で取得されたものを使用した。
人為資源の供給が多い集落では、流入源となるイエネコの個体数も多くなる傾向が認められた。森林への流入数については、全体的にはイエネコ個体数の傾向と一致していたが、一部イエネコ個体数が少ないにも関わらず流入数が相対的に多い地域が確認された。人為資源供給の程度や森林内の野生動物の豊富さ、森林へのアクセスのしやすさなどが関係していると考えられる。本発表では、集落からの流入を優先して対策する必要のある地域についても議論する。