| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-342  (Poster presentation)

グリーンアノールに対するアカオノスリ音声の忌避効果の検証【A】
Validation of deterring effects by Red-tailed hawk call against green anoles【A】

*猪森恒一朗, 岩井紀子(東京農工大学)
*Koichiro INOMORI, Noriko IWAI(TUAT)

小笠原諸島では外来種グリーンアノールが固有の昆虫相に深刻なダメージを与えている。本種の拡散防止策として遮断フェンスが用いられているが、忌避効果を補助的に付加できればその防除効果を上げられると考えられる。グリーンアノールは聴覚が優れており、音声に対する忌避が期待できる。実際に先行研究では原産地の捕食者であるアカオノスリの地鳴きを忌避することが示されているが、これは90 dB、4~8秒間隔と大音量かつ高頻度であるため、野外で使用するには騒音被害や在来生物への影響が懸念された。そこで、忌避効果を維持する音量と再生間隔を検証する室内実験を行った。実験アリーナに2つのスピーカーとグリーンアノールが逃げ込むための逃避用パネルを左右対称に設置した。片方から音声を流し、アノールがどちらのパネルに登るか、および、登るまでの時間を記録した。音量については90、80、70、60 dBの4条件、再生間隔についてはコール間隔を15、30、60、300秒の4条件設定した。音量の実験では20個体を重複して4条件で使用し、再生間隔の実験ではそれぞれの条件で独立した17~18個体用いた。音声を再生しなかった側のパネルに登った(忌避した)個体数と、再生した側に登った(忌避しなかった)個体数について二項検定した結果、音量では90 dBのみ、再生間隔では30秒間隔のみで有意に多くの個体が忌避していた。また、パネルに登るまでの時間は音量の実験でメスがオスよりも有意に短かった。80 dB以下の音量や、30秒以上の間隔ではアノールに十分な捕食リスクを感じさせられないと考えられた。アカオノスリ音声を忌避音声として野外で使用する場合、90 dB、30秒間隔での再生が適していると考えられた。


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