| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-345 (Poster presentation)
ニホンイタチは、ネズミ駆除を目的に自然分布していない日本の島々に導入された国内外来種である。伊豆諸島の三宅島では、1980年代の放獣後に定着したと推定されており、オカダトカゲが激減するなど生態系への影響が報告されている。外来種の分布や密度に関する情報は、防除にむけた対策や新たな生息地への適応を考える上で重要である。そこで本研究では、GIS解析と一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて、三宅島のニホンイタチの生息適地と密度の推定を行った。
2020年3月に島内7カ所の道路上で糞センサスを行い、距離当たりの糞の発見率を求めた。島全体を200mメッシュに分け、植生(畑を含む草原、裸地、森林、人工地、竹林)や標高を説明変数としたGLMMを実行し、糞の発見率に影響を与える要因を特定した。その後、環境データをもとに、島全体の糞相対密度を推定した。さらに、糞由来のDNAを用いた標識再捕獲法にて推定した1カ所の個体群密度と糞相対密度の値から島全体の個体群密度を推定した。
GLMMの結果、畑を含む草原のみを説明変数とするモデルが選択された。島内各地で糞が検出され、人工地が説明変数に含まれなかったことから、放獣されたと想定される人工地周辺に分布が偏っていないことが明らかになった。畑を含む草原で正の影響が見られたが、在来地域においても森林より農用地で出現率が高いことや、イネ科群落の利用割合が高いことが報告されており、三宅島と在来地域で生息適地は似ていると推定された。また、島全体の推定個体数は711匹、密度は13匹/km2であった。比較可能な在来地域での密度データはないが、三宅島の距離当たりの糞発見率は多摩川での報告と同程度であったことから、密度も同程度であると推測される。以上より、定着後40年経った三宅島のニホンイタチは在来地域と似た環境を生息適地とし、同程度の密度で生息していると考えられる。