| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-347 (Poster presentation)
生物多様性保全を目的とする外来種管理に取り組む地域は数多く存在するが、多くの地域では予算や資源が限られ、管理目標を達成できる効率的な捕獲戦略が求められている。日本の外来種管理ではわなの使用例が多く、わなの捕獲効率向上のためには、捕獲努力量のモニタリングとともに、対象種のわなとの遭遇頻度や遭遇後の捕獲頻度をふまえて捕獲戦略を検討する必要がある。
本研究では、わな捕獲効率を高める捕獲戦略の提案を目的に、伊豆諸島御蔵島でのネコ対策を対象として、捕獲データ収集及びカメラトラップ調査を実施した。御蔵島はオオミズナギドリの最大規模の繁殖地だが、野生化したイエネコによる脅威が近年明らかとなり、2021年度から、ネコの低密度化を目標とする試験捕獲を実施した。本研究では、ネコの餌資源が枯渇する冬期の試験捕獲(2021年12~2月の各3~4日間)を対象に、捕獲データからCPUE/100わな日や捕獲個体の性比・齢、カメラトラップからわなとの遭遇頻度・遭遇後の捕獲頻度・警戒行動割合を算出し、その時空間的な変化を比較した。なお、同一個体の連続撮影を同一撮影イベントとし、わな遭遇頻度を撮影イベント頻度/100カメラ日、遭遇後の捕獲頻度をわな侵入イベントの発生頻度とした。
その結果、CPUEは12月24.66、1月12.26、2月5.77と低下し、遭遇頻度も同様に低下した。捕獲序盤は幼獣、後半はメス成獣の捕獲割合が高かった。遭遇後の捕獲頻度は約5割で、12月が最も高かった。捕獲個体は警戒行動割合が低い一方で、わなを繰り返し訪問して捕獲されるケースもみられた。ネコは昼夜通して撮影され、道路沿い及び林内で同程度捕獲されたが、混獲種のネズミ類は夜間に撮影が集中し、林内で多く捕獲された。以上から、現在のネコ高密度期には、省力的な道路沿いでわなを長期間設置することで、より効率的に多くの個体が捕獲できると考えられた。