| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-351 (Poster presentation)
都市化による残存緑地内の生物多様性や種組成への長期的な影響を明らかにした研究例は少ない。都市化による残存緑地における生物多様性や種組成への長期的影響は、調査対象とする分類群の違いや在来種か外来種かによって異なること、調査地域のコンテクストによって異なることが指摘されている。しかし、生物相の記録が希少であるため、生物相の長期的変化に関する研究例は多くなく、また、複数の緑地を対象として検討した研究例は限られている。そこで本研究では、東京大都市圏内の15の残存緑地を対象に生物相の数年から数十年間の長期的変化を検証した。
種子植物相、鳥類相、チョウ類相に関する資料を収集・分類して在不在データを作成し、過去から現在にかけての種数の変化をみた結果、過去から現在にかけて種子植物相の大部分を在来種が占めていた。よって、都市化による外来種の侵入の影響は大きくないといえる。しかし、今後、外来種の増加および種組成の変化により、在来種の種組成変化がもたらされる可能性がある。
各分類群の種組成の変化とその要因を検証するため、Sorensen非類似度を用いた過去と現在の種組成の違いを応答変数に、そして、対象地の面積、過去の調査から現在の調査までの経過年数、対象地周辺の緑被率を説明変数として重回帰分析を行った。その結果、鳥類相や自動散布様式以外の散布様式(以下、その他の散布様式とする)をもつ外来種子植物の非類似度と経過年数に有意な関係が示された。よって、残存緑地へ出入りする人により、その他の散布様式をもつ種の移動が起きている可能性がある。また、鳥類相はその他の散布様式をもつ外来種子植物の種組成変化の影響を受けた可能性がある。また、その他の散布様式をもつ在来種子植物の非類似度と対象地面積に有意な関係が示されたことから、東京大都市圏の残存緑地では、面積の大きい緑地ほど在来種の種組成の時間的変化が抑えられる可能性が高い。