| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-352  (Poster presentation)

希少水生昆虫ガムシの生息環境と行動特性【A】【B】
Habitat and behavioral characteristics of a rare giant water scavenger beetle, Hydrophilus acuminatus【A】【B】

*山中基成(筑波大学), 疋田直之(水戸葵陵高等学校), 佐伯いく代(筑波大学)
*Motonari YAMANAKA(University of Tsukuba), Naoyuki HIKIDA(Mito Kiryo High School), Ikuyo SAEKI(University of Tsukuba)

ガムシ (Hydrophilus acuminatus) は東アジアを中心に分布する大型の水生昆虫で、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。本種の生息環境と行動特性を把握するため、生息状況、潜水行動、および食性の分析を行った。生息状況については、茨城県内の水田および溜め池を対象として2021年から2022年にかけてガムシの探索調査を行った。この調査では、各地点において、ガムシの個体数、環境タイプ(溜め池、平地水田、または谷津田)、pH、電気伝導度、溶存酸素量、水草の量、他の水生昆虫種の個体数を記録し、ガムシの生息に影響する環境要因を推定した。次にガムシの潜水時間と気体交換時間の特徴を調べるため、室内の水槽において潜水行動をビデオで記録し、ガムシとは異なる呼吸様式をもつゲンゴロウ科の種との比較実験を行った。食性については、採餌実験と糞のDNAメタバーコーディング解析を行った。採餌実験では、飼育個体に水草、落ち葉、アカムシ、シジミを与え、どのエサから優先的に採餌するかを記録した。糞のDNA解析は、野生個体4個体の糞を野外で採集し分析した。生息状況調査の結果、ガムシは水草の多い谷津田を好むと推定された。ガムシを発見した地点では、複数の絶滅危惧種も確認したため、こうした環境は他の水生昆虫の生息にも適していると考えられる。ガムシの潜水時間は、平均180秒程度で他の種との大きな差はなかったが、気体交換時間ではゲンゴロウ科の種よりも短い傾向であった。また、呼吸の際の足場として水草を頻繁に使用する行動が観察された。採餌実験では、ガムシの成虫は植物性のエサよりもアカムシなどの動物性のエサを好んで食べていた。野生個体の糞からは、ユスリカ、ニホンアカガエルなどのDNAが検出された。以上から、ガムシの生息には谷津田地形と水草が重要であり、動物性のエサ資源が嗜好されることが示唆された。


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