| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-353  (Poster presentation)

スマートフォン画像と深層学習を用いたオオサンショウウオの個体識別【A】
Individual identification of Japanese giant salamander using deep learning and smartphone images【A】

*高屋浩介(京都大学), 田口勇輝(広島市安佐動物公園), 伊勢武史(京都大学)
*Kosuke TAKAYA(Kyoto Univ.), Yuki TAGUCHI(Asa Zoo, Hiroshima.), Takeshi ISE(Kyoto Univ.)

年齢や健康状態などの動物の個体情報は、生態学的な研究や保全活動を実施する上で重要である。これらを収集するためには、個体の識別が必要不可欠であり、固有の模様やキズなどの特徴に基づいた、目視による画像の識別が対象種に影響を与えない手法として活用されてきた。しかし、対象の個体数が増加するほど、画像の識別に時間を要することが課題だった。本研究では深層学習を用いてオオサンショウウオ(Andrias japonicus)の頭部に散在する黒色の斑紋から個体識別が可能か明らかにすることを目的とした。広島市安佐動物公園の成体(11個体)の頭部をiPhone11で撮影し、トレーニング及びテスト画像に用いた。撮影は11時、15時、18時の1日3回行い、朝・昼・夕方と定義した。頭部の斑紋を用いて個体識別するために、YOLOv5を使用し、画像の中からオオサンショウウオの頭部を検出するモデルを作成した。アノテーションデータの作成には、LabelImgを用いた。そして、検出後の頭部画像を60%の大きさに切り取ることで斑紋のみの画像を作成し、EfficientNetV2を用いて個体識別モデルを作成した。精度検証の指標としてはoverall accuracy, Cohen’s Kappa coefficient, macro average F1 scoreを用いた。8月20日に撮影した画像をトレーニング画像、8月21日に撮影した画像をテスト画像として用いた場合、accuracyは99.86%、Kappa係数は0.998、 F1 score は0.998だった。本研究により、オオサンショウウオの頭部の画像のみで、簡易に高精度の個体識別が可能であることが明らかになった。斑紋を有する種は広く存在しているため、同様の手法を他種の両生類にも活用できると考えられる。また、本研究では、スマートフォンの画像でも個体の識別ができることを示した。スマートフォンは広く普及しているため、本手法をアプリケーションにすることで、大規模な市民科学との連携も可能であると考えられる。


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