| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-356 (Poster presentation)
ネオニコチイド系農薬は1992年に日本で登録されて以来、世界中で一般的に使用されている。この農薬はその残効時間の長さなどにより従来の農薬よりも効果的に害虫の被害を防除することができる。一方で、河川や湖沼にネオニコチノイドを含む水が流入することにより、水圏生態系を構成する様々な生物に影響を与える可能性が示唆されている。
動物プランクトンは、水圏生態系において低次生産と高次生産とをつなぐ重要な役割を果たしている。そのため、水圏生態系に対するネオニコチノイド系農薬の影響を評価する上で、動物プランクトン群集への影響を把握することは不可欠である。しかし、動物プランクトン群集に対する影響を調べた研究には、ネオニコチノイドが深刻な影響を及ぼしているとするものもあれば、影響は見られないとする研究もあり、影響評価は多様で一貫していない。このように研究結果が錯綜している原因として、動物プランクトンの分類学的な解像度が低いことや、農薬暴露時の群集構造を十分に考慮していないことが挙げられる。農薬と生物群集の因果関係を紐解くには、その基礎となる種レベルでの生態や農薬感受性を把握する必要がある。しかし、それら知見の集積は著しく乏しい。
そこで本研究では、国内で最も広く使用されているネオニコチノイドの1つであるイミダクロプリドを対象に、その動物プランクトンへの影響を種レベルで調べた。具体的には、平地湖沼や水田に生息している枝角類18種、橈脚類9種(カラヌス目3種・ケンミジンコ目6種)の計27種を対象に急性毒性試験を実施し、半致死濃度を算出することで、農薬に対する感受性を解析した。本講演ではその結果を報告するとともに、なぜ農薬に対する動物プランクトン群集の応答が多様なのかを考察する。