| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-361 (Poster presentation)
砂浜では砂の移動や潮風により独特な植生が形成されることが知られているが、日本各地で砂浜とともに海浜植物が減少しているという報告がある。北海道でも一部で海浜植物が減少しているという報告があるが、北海道全域の海浜植生を調査した事例は報告されておらず、現状が分かっていない。
本研究では、北海道を象徴する海浜植物のハマナス(Rosa rugosa)に注目し、1950年代、1980年代の北海道全域の海浜植生を調査した地点で植生を再調査し、北海道西岸におけるハマナスの生育地数、被度の変化を明らかにするとともに、変化の要因として、近年の海岸侵食の程度と消波ブロックや堤防などの人工物の設置の有無の影響を検討した。
ハマナスは1959年では24地点中12地点、1987-88年では44地点中44地点、2022年では47地点中36地点で確認された。ハマナスの被度は1959年から1980年代にかけて増加していた。各種の資料から、1959年から1980年代までのハマナスの生育地の増加の一因には、1959年以前の海岸林の伐採に伴う砂浜環境の悪化が植林等によって改善されたと考えられた。1987-88年から2022年にかけてはハマナス生育地数、被度は減少していたが、海岸侵食の程度と人工物設置の影響は有意ではなく、減少の要因はよくわからなかった。ハマナスが減少した調査地ではオオヨモギ、ナガハグサ、ヤマブドウが共に減少し、ヨシが増加していた。ヨシは塩分に耐性があり1988年から2022年の間に侵入し増加したと考えられる。何らかの原因による種の入れ替わりがあったようである。