| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-363 (Poster presentation)
淡水性ハゼ科魚類であるヨシノボリ属は人間活動が盛んな地域とその生息場所が重複している場合が多く,著しく生息域が狭められている.岐阜市北部には,カワヨシノボリ,トウヨシノボリ,トウカイヨシノボリの生息が確認されているが,高速道路敷設などの開発により急速にその自然環境が変化している.また,東海地方固有種であるトウカイヨシノボリは開発のみならずトウヨシノボリとの交雑による遺伝的撹乱によっても絶滅の危機に瀕しているが,2005年まで近縁種と混同されてきたため詳細な生態や生活史に関する知見が不足している.そこで本研究では,本地域の河川環境保全に向けて3種の生息環境や分布現況の把握,トウカイヨシノボリの生息環境保全に必要な生態学的知見の蓄積を目的として研究を行った.
2021年6月〜12月に岐阜市内の小河川と池沼(計13区画)において捕獲調査を行い,ヨシノボリ属が採捕された場合は捕獲地点において水温,水深,流速,pH,EC,DO,透視度,植生を記録した.捕獲後に各区画において採水を行い陰陽イオン濃度,溶存有機態炭素量を測定した.また,各区画において1m間隔で50cm方形区を設置し,底質類型(落葉落枝,粘土,泥,砂,小礫,中礫,大礫,巨礫,コンクリート)のうち優占する上位3類型を記録した .
その結果,カワヨシノボリは河川上流部のみで確認され,他の2種に比べて有意に流速の速い場所に生息していた.また,本種は砂礫底やコンクリート底を選択的に利用していることが明らかとなった.トウヨシノボリは止水域や河川緩流部を中心に確認され,トウカイヨシノボリと生息地が重複する場合が多く見られた.ただし,2種が共存する場合,トウヨシノボリがやや流れのある場所に分布していた.トウカイヨシノボリは泥や落葉落枝が優占する環境に生息するが,点在する巨礫も選好しており産卵基質や捕食者回避のための利用が考えられた.