| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-377 (Poster presentation)
近年、風力発電施設が急増している中、鳥衝突が世界的に深刻な問題となっている。風車建設の際には環境影響評価が行われ、鳥類の飛翔数を元にした衝突数が推定される。しかしながら、鳥類調査の精度の低さに起因した環境影響評価の手戻りや、運用後に鳥衝突が相次いだ事例があることから、調査方法の改善や新たな調査技術の確立が喫緊の課題となっている。これまでの調査方法では、事業地内に定点を複数設け、調査員が半径数㎞の範囲の鳥類の飛翔パターンや位置を記録しているが、目視では遠近感がつかめないことや、見落としがあることから、その精度は必ずしも高いものとはいえなかった。目視に代わる方法として、調査員の技量の影響を受けず、広範囲で飛翔体を追跡可能なレーダが期待されている。しかしながら、レーダで捕捉可能な鳥種や、各種レーダの物標の捕捉率など未解明なことが多く、未だに鳥類の飛翔数の定量的評価には至っていない。本研究では、船舶用レーダの照射に併せて目視観察を行い、写った物標数と目視観察による個体数の関係を明らかにすることで、船舶用レーダを用いた鳥類の定量評価の精度を検証した。検証の結果、複数の鳥種の計測において、目視捕捉数とレーダ物標数との間に相関がみられた。また、捕捉数に影響を及ぼす重要な要因の一つは、鳥類の飛翔高度であった。レーダは、目視観察よりも、高精度に高高度を飛行する鳥の個体数を計測できると考えられる。本研究では、目視捕捉数とレーダ物標数との間に強い相関がみられたことから、レーダデータは個体数推計に関し高い定量性を有していると判断できた。