| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-386 (Poster presentation)
道路は哺乳類の採餌場所や移動経路として利用され、生息地の一部として機能している。また、舗装の有無や素材(以下、舗装状態)によって周辺の哺乳類の生息密度が異なることが報告されている。このような哺乳類の道路利用に伴う行動変化は、哺乳類を巡る生物間相互作用にも影響を及ぼす可能性がある。本研究では、道路の舗装状態の違い(木道;アスファルト道;土道)が哺乳類による被食型種子散布に与える影響を検討した。調査は2022年の8月、10月、11月に栃木県日光市戦場ヶ原の木材で舗装された木道3ルート(1.2 km;1.3 km;2.4 km)、アスファルトで舗装されたアスファルト道1ルート(2.5 km)、舗装が施されていない土道2ルート(0.9 km;1.5 km)において哺乳類の糞の採集を行った。そして、糞内から得られた種子の同定・種子数のカウント、その散布者(糞の排泄者)の同定を行った。その結果、哺乳類の糞の密度は、アスファルト道および土道と比較して木道において有意に高かった(Negative binomial GLMM, p < 0.05)。散布された種子の密度は土道と比較して木道で有意に高く(p < 0.05)、アスファルト道とは土道・木道ともに有意差はみられなかった(p > 0.05)。以上より、本調査地における道路では、特に木道で多くの糞が排泄されており、その結果、種子が木道上に散布されやすいことが示唆された。以上の結果をもとに、本発表では木道が哺乳類に選択的に利用された要因や道路の舗装状態の違いが動物被食散布を行う植物の世代更新や分布に与える影響について考察する。