| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-389 (Poster presentation)
莫大な生態系サービスを供給する熱帯林で進行している森林減少・劣化を抑制するために、森林の地上部炭素量(AGC)をモニタリングし、適切な森林管理に活かす必要がある。従来のAGCの広域評価手法は、衛星画像を撮影した時期・地域で地上調査が必要で、高コストなため、地上調査情報がない年・地域でもAGCを予測できる超広域モデルの開発が求められる。本研究では複数の年・地域の地上調査情報を統合し、そこから推定されたAGC(応答変数)と、プロットの緯度経度・年に対応する衛星画像の分光反射情報など(説明変数)の間に、機械学習モデルを作成した。
超広域モデルの精度は外挿先の年・地域における地上調査情報の有無によって変化する可能性があるため、以下の分割法で精度を検証した ; 1)ランダム分割(通常外挿時の精度)、2) 調査地域ごとに検証用データとモデル作成用データに分割(地上調査情報がない地域への外挿時の精度)、3)調査年ごとに分割(地上調査情報のない年への外挿時の精度)。通常外挿・地域外挿時の精度はRMSEが78.7(t/ha)・86.9(t/ha)であり、複数年に渡って調査されたプロットの通常外挿・時間外挿時の精度はRMSEが79.1(t/ha)・69.0(t/ha)であった。このことから、地上調査情報のない地域への外挿は精度が低下し、地上調査情報のない年への外挿は精度が低下しないことがわかった。
さらに、超広域モデルを管理履歴の異なる複数の森林管理区に外挿した。管理区レベルのAGCの平均値は、航空機LiDARを用いて同地域の2016年のAGCを高精度で予測した先行研究の結果とほぼ一致したため、超広域モデルの管理区レベルでの予測精度は担保されたと考えられる。従来、AGCのモニタリングには各対象地域で衛星画像と対応する年に地上調査を行うコストがかかり、多くの熱帯地域で実施できない状況にあった。本研究は、複数の年・地域のデータを統合することで、地上調査を最小限にし、低コストでモニタリングできる可能性を示した。