| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-391 (Poster presentation)
金沢市には、江戸時代やそれ以前から続く都市用水網が、平野部から河口付近まで総延長150kmにわたり張り巡らされている。しかし都市用水の生物多様性保全の機能については世界的に先行研究が乏しく、そこに生息する魚類相も不明である。また用水の流量は、水稲の水需要に合わせて頻繁に変化し、農閑期には干出することもある一方で、金沢の歴史的景観地区では観光需要のために通年、水が流れている。この多様な水環境により、緩い流れを好むメダカや一時的水域を利用するドジョウから、流れの早い環境を好む魚種までが生息し、用水路全体の生物多様性が維持されている可能性がある。そこで本研究では金沢市の用水網を対象に、環境DNA分析技術を用いて用水の魚類群集の調査を行った。採水は金沢市中心市街地を流れる犀川、浅野川と、それら河川を水源とする用水路を対象に行った。また1年を通して、用水路の流量変化を計測した。その結果、全48種の魚類が検出され(河川38種、用水42種)、うち河川のみで検出された種は6種、用水のみで検出された種は10種であった。河川のみ検出された6種のうち5種がオオクチバスなどの大型外来魚、用水のみ検出された10種のうち国内種はウナギなど5種、外来種5種であった。得られた魚類群集についてクラスター分析を行うと、大きくの3つのクラスターに分類された。グループ1は河川と用水路の上流部、グループ2は河川と用水路の下流部に多く、グループ3は用水路の一部で出現した。グループごとの指標種を抽出すると、グループ1は、アカザやカワヨシノボリといった河川上中流域に生息し、礫質を好む魚種が、グループ2は、オイカワやカマツカ類といった河川中下流域に生息する魚種が、グループ3は止水域に生息するメダカ類が抽出された。これらの結果は、都市用水路内の多様な環境によって、河川とは異なる魚類相が維持されていることが分かった。