| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-002 (Poster presentation)
ニホンジカによる森林被害は、再造林や森林整備の実施に支障を及ぼし、生息密度が高い地域においては、下層植生の消失や土壌流出により森林の有する公益的機能の発揮に影響を与える恐れがある。
奈良県では、糞塊法によって生息状況を調査し、捕獲数などのデータを用いた階層ベイズモデル法の結果から、北西部、東部、南部の各地域における推定個体数および捕獲目標頭数を算出している。しかし、捕獲目標頭数以上の捕獲を達成している北西部において、農林業被害が拡大傾向にあることなどから、各地域における推定個体数および捕獲目標頭数を見直す必要が生じているといえる。
近年、野生動物の生息密度調査においてカメラトラップ法が広く利用されており、自動撮影カメラから取得できる情報だけで密度を推定する方法としてRESTモデルが開発され、活用が期待されている。
そこで、本研究では、奈良県内の調査地において糞塊法調査を実施するとともにカメラトラップ法による調査を実施し、RESTモデルにより生息密度を推定した。ニホンジカの生息密度と糞塊密度の相関を把握することにより、糞塊密度の生息密度指標としての信頼性を評価するとともに、糞塊法の調査結果を用いた生息密度算出および個体数推定の可能性について検討することを目的とした。
令和3年度は高取町内のスギおよびヒノキ人工林に調査地を設定し、カメラトラップ法(RESTモデル)により、調査地の生息密度を30.15頭/㎢と推定した。糞塊法調査を実施し、糞塊密度は46.49糞塊/kmであった。令和4年度は野迫川村のブナ・ミズナラ天然林に調査地を設定し、カメラトラップ法(RESTモデル)により、調査地の生息密度を14.07頭/㎢と推定した。糞塊法調査を実施し、糞塊密度は0 糞塊/kmであった。ただし10粒未満の糞塊を含む糞塊密度は0.76 糞塊/kmであった。令和5年度以降も調査を継続し、調査結果を用いて推定生息密度と糞塊密度の相関関係を調べる計画である。