| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-006  (Poster presentation)

東京ヒキガエルの繁殖状況:西日本亜種の侵入と局所個体群絶滅の危機
Reproductive state of the Japanese common toad in Tokyo: invasion of western lineages and extinct local populations

*長谷和子(総研大・統合進化科学), 高柳真世(多摩動物公園), 橋本浩史(多摩動物公園, 恩賜上野動物園), 小川裕子(多摩動物公園, 恩賜上野動物園), 古橋保志(多摩動物公園, 葛西臨海水族園)
*Kazuko HASE(SOKENDAI), Mayo TAKAYANAGI(Tama Zoological Park), Hiroshi HASHIMOTO(Tama Zoological Park, Ueno Zoological Garden), Hiroko OGAWA(Tama Zoological Park, Ueno Zoological Garden), Yasushi FURUHASHI2(Tama Zoological Park, Tokyo Sea Life Park)

東日本に位置する東京都は,本来はアズマヒキガエル(B. japonicus formosus)の分布域だが,西日本亜種のニホンヒキガエル(B. j. japonicus) の人為的移入があり,在来のアズマヒキガエルと混在している. 東京のヒキガエルは23区 (区部) では遺伝的撹乱が広がっていることはわかっているが,在来のアズマヒキガエルが都内のどの地域にどの程度残っているのか詳細なことは分かっていない.そのうえ,近年は両生類全体で個体数が激減しており,カエル類 (無尾目) では,アズマヒキガエルをはじめ4科11種が東京都から絶滅危惧種の指定を受け保全対象となっている. 本研究では,東京都内の区部から南多摩エリアに渡る29の局所個体群におけるmtDNAの遺伝子型 (東西ハプロタイプ) を調べた結果と,東京都区部における「カエル合戦」の現状について,フィールド調査を行なった. 結果,繁殖規模と卵塊数は大幅な減少傾向にあり,ニホンヒキガエルの侵入は北多摩エリアまで広がっている現状が明らかとなった.他方で,これまで未確認だった在来のアズマヒキガエル系統だけからなる局所個体群が,南多摩エリアの八王子市内だけでなく23区部エリアにも存在していることがわかった.


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