| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-013  (Poster presentation)

メタ群集レベルにおける潮間帯固着生物種の時空間分布を決定する要因
Factors determining the spatio-temporal distribution of intertidal sessile species at the metacommunity level

*小川日咲乃, 石田拳, 野田隆史(北海道大学)
*Hisano OGAWA, Ken ISHIDA, Takashi NODA(Hokkaido Univ.)

本研究は岩礁潮間帯固着生物群集を対象に、希少種が希少である理由と希少種の生存戦略を理解するために、種の相対優占度と様々な局所環境に対する応答特性との間の関係性を明らかにした。まず、各種の局所環境応答特性を明らかにするために、北海道の約230の固定調査区における19年間の存否データを用い、目的変数を各年各調査区でのすみつきと絶滅イベントとし、説明変数を他種のアバンダンス、局所種数、消費圧、自種のアバンダンス(絶滅のみ)などとしてGLMで解析し、各説明変数の部分相関係数と切片(標準化すみつき率と標準化絶滅率)を各種の局所環境応答特性として求めた。次に、得られた各種の局所環境応答特性と相対優占度(総出現頻度)との間の関係性を明らかにするために順位相関係数による評価と相対優占度上位6種(優占種群)と下位6種(希少種群)での局所環境応答特性の比較を行った。その結果、相対優占度と有意な正(あるいは負)の相関が認められた局所環境応答特性は、標準化すみつき率、絶滅に及ぼす局所種数の効果、標準化絶滅率、および(絶滅に及ぼす自種のアバンダンスの影響)であった。優占種群ではほとんどの種で局所種数の増加に伴いすみつきが抑制されたが、希少種群のほとんどの種ですみつきが促進された。標準化すみつき率は希少種群の方が有意に低かった。絶滅に及ぼす局所種数の効果は希少種群の方が有意に小さく、局所種数の増加が及ぼす絶滅の促進効果の影響は希少種群の方が小さかった。また自種のアバンダンス増加に伴い優占種群は絶滅が抑制されたが、希少種群のほとんどの種は絶滅が促進された。以上の結果は、希少種が希少である理由として、すみつき能力が低いことと種内密度効果が生じやすいことが重要で、希少種の生存戦略として、絶滅しにくいことと拡散競争の影響が小さいことが重要であることを示唆している。


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