| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-014 (Poster presentation)
種多様性と群集アバンダンスの時間変動性の関係を明らかにすることは生態学における重要なテーマである。この関係を明らかにするフレームワークとしてThibautとConnolly (2013)は種多様性から群集アバンダンスの時間変動性への直接的な因果関係と、種多様性から種間の個体群動態の同調性と個体群アバンダンスの時間変動性を介した間接的影響を因果モデルで評価する方法を考案した。このフレームワークを用いて、これまで群集アバンダンスの時間変動性に及ぼす影響が様々な環境要因で評価されてきたが、地形の影響についての研究例はない。そこで、本研究では、岩礁潮間帯藻類に先行研究と同様のフレームワークを適用し、6つの地形特性(開放度、砕波帯の幅、岩礁面の海面までの距離、岩礁面の傾き、岩礁面の50cmスケール起伏度、岩礁面の15cmスケール起伏度) が群集アバンダンスの時間変動性に及ぼす影響について、まず、因果関係の強度と経路を明らかにし、因果関係が地形特性の空間スケールと、地形特性の特徴の違い(ハビタットの構造複雑性の要因である局所的地形特性か、ハビタット周辺の環境の不均質性にかかわる地理的地形特性か)に依存してどの様に変化するかを評価した。その結果、地形特性が群集アバンダンスの時間変動性に及ぼす影響は地形特性の空間スケールに依存しなかったが、地形特性の特徴の違いによって違うということがわかった。この違いは地理的地形特性が、局所的地形特性よりも種間の個体群動態の同調性を介した群集アバンダンスの時間変動性へ大きく影響を及ぼしているというものである。この結果は、先行研究と一致する。一方で局所的地形特性は全ての因果経路で、群集アバンダンスの時間変動性にほとんど影響を及ぼしていないことがわかった。これらの結果は、地形はハビタット周辺の環境不均質性にかかわることで群集アバンダンスの時間変動性に影響を及ぼしているということを示している。