| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-015 (Poster presentation)
森林のリター層は、土壌動物の食物であると同時に住み場所資源でもあるため、森林の伐採や、落葉の採取等によるリターの除去は、土壌動物に与える大きな撹乱の一つといえる。リターの除去に対する土壌動物群集の反応は、土壌動物のサイズや住み場所の選好性による生息場所の違いで説明されてきたが、定量的に土壌動物の形質と撹乱への反応の組み合わせを評価した例は少ない。この研究では、実験的にリターを除去しその後の経過を追跡することで、土壌動物群集構造に与えるリター層撹乱の影響を評価した。
2019年7月に京都大学上賀茂試験地のヒノキ林に12m×8mのプロットを設定し、その半分をリター除去区とした。除去区のリター層のうち、L層とF層の上部を除去した。除去前、除去2ヶ月後、14ヶ月後、26ヶ月後の4回、塩ビ製円筒を用いてリター層サンプルを採取した。このサンプルからツルグレン装置を用いて中型土壌動物を抽出し、トビムシとササラダニを種レベルまで同定した。除去後の時間に伴う処理区間のトビムシ及びササラダニ群集組成の変化を、Principal Response Curve (PRC)を用いて解析した。また、各分類群の外部形態の形質の群集加重平均(CWM)を求め、除去区と対照区の値を比較した。
トビムシ群集のPRCによる解析では、除去の効果はp <0.05で有意だが、除去後2ヶ月で顕著な群集組成の差異は、14ヶ月以降には不明瞭となった。ササラダニの群集のPRCによる解析では除去の効果は有意ではなかった。トビムシ群集の体長のCWMは除去後2ヶ月の時点でのみ、除去区で有意に体長のCWMが大きくなった。以上から、トビムシ群集ではリター除去の影響を一時的に受け、体長が大きく乾燥などに耐性のある種が残り、小さい種が減少することが示されたが、リター除去後14ヶ月以上経過するとその影響は不明瞭になることがわかった。