| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-023  (Poster presentation)

リターサイズが樹洞の水生無脊椎動物群集に及ぼす影響
Influence of litter size on aquatic communities in artificial tree holes

渡邉憲一郎(東京農工大学), *吉田智弘(東京農工大学), 中村彰宏(中国科学院・XTBG)
Kenichro WATANABE(Tokyo Univ. Agr. Tech.), *Tomohiro YOSHIDA(Tokyo Univ. Agr. Tech.), Akihiro NAKAMURA(XTBG, CAS)

水を溜めた樹洞は、森林生態系における水生無脊椎動物の重要な生息場所である。その中で起こる種間関係を詳細に理解することは、森林で無脊椎動物の多様性がどのように維持されているのか、特に資源利用に関して理解するのに役立つ。同じ餌資源を複数の異なる種が順次利用することを加工連鎖と呼ぶ。本研究では、餌・棲み場所資源としての樹洞内の葉リターの状態に焦点を当て、3つの処理区分(「未処理」「細片化」「粉状」葉リター)の入った人工容器を用いて、次の仮説を検証した:(1)無機イオンは葉の細片化が進行するにつれて溶出し、水は酸性化し、結果として無脊椎動物に影響する。(2)葉リターの細片化が進むにつれて微生物や微小粒子を摂食する濾過食者は増加する、(3)葉リターの細片サイズの違いは、無脊椎動物の群集構造に影響を与える。本研究の結果、pHと溶存酸素量の両方ともに、処理区間で有意な違いは見られなかったが、葉リターの断片化とともに増加する傾向を示した。無脊椎動物の群集構成には、葉リターの細片化に関連した明瞭なパターンはみられなかった。粉状葉リターの樹洞の無脊椎動物群集は溶存酸素量の増加と関連していた。微細な葉リターが存在する条件では濾過食性のキンパラナガハシカTripteroides bambusaが、粗い葉リターが存在する条件では底生動物のヌカカ科Ceratopogonidae sp.が優占していることがわかった。本研究の結果は、葉リターの細片化が、異なる優占種に異なる効果を有することを示唆している。本研究結果から、資源加工は必ずしも生息種に対して正の効果を有するわけではないと結論づけた。


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