| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-024 (Poster presentation)
餌資源を共有する捕食者間において、一方が他方を食べるギルド内捕食の構造では、上位捕食者の除去が中位捕食者の増加を介して共有餌の減少を引き起こすメソプレデターリリースが生じる可能性があり、複数の外来捕食者の管理を考える上でも注視すべき構造である。本研究では、ネコ(上位捕食者)の捕獲が行われている伊豆諸島の御蔵島において、ネコの密度変化がドブネズミ・クマネズミ(中位捕食者)とオオミズナギドリ(共有餌)に与える影響を検証した。ネコ捕獲の前後に、自動撮影カメラによりネコの密度、生体捕獲によりネズミ類2種のCPUE、直接観察によりオオミズナギドリの繁殖成功を調査し比較した。
その結果、島全体では、ネズミ類のCPUE・オオミズナギドリのヒナの生存率共に、ネコ捕獲前後で大きな変化は見られなかった。一方で、島内のネコの密度が広い空間範囲で大きく低下したエリアでは、オオミズナギドリのヒナの生存率の増加が検出された。このエリアではネズミ類のCPUEの大きな変化も見られず、メソプレデターリリースは生じていなかった。これらの結果から、島全体でネコをさらに低密度化させることで、御蔵島のオオミズナギドリ個体群の繁殖成功が向上する可能性が示された。