| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-051 (Poster presentation)
近年の画像解析技術(コンピュータビジョン:CV)の発達により、動画上の物体をより簡単に追跡(トラッキング)することが可能になっている。これらの技術を生かし、動物行動実験において撮影された動画をCVを用いて分析することで、個体の移動軌跡や速度などを詳細に分析することが可能となり、ビデオ映像を用いたより高度な行動学的分析が行われ始めている。しかしながら先行研究の多くは画像解析がしやすい特定の種に限定し、強くコントロールされた撮影条件におけるデータを用いた分析であるため、これまで一般的な行動学者が実験の際に撮影してきた映像をそのまま適用して分析を行うことは難しい場合が多い。ではどのような動画であれば解析できるのか、どのような手法が適しているのか、またどのように工夫すれば解析できるのかといった情報を実際の動画を用いて検討した研究事例はまだまだ少ない。
本研究ではイモリの繫殖行動を観察するために人力での解析を前提として撮影した動画について、複数のフリーソフトウェアによるトラッキングを行い比較することで、一般的な動物行動実験映像にCVを適用する際に問題になる点やどのようにすれば解決できるのか、どのソフトウェアが適しているのかについて検討を行った。特に本研究ではオス2個体メス1個体の条件での撮影を行っているため、複数個体の追跡に適しているとされているフリーソフトウェア3種(Trex、idtracker.ai、UMAtracker)を用いて解析を試みた。
本研究結果から、UMAtrackerを用いてパラメーターをうまく調整すれば十分分析は可能であることが明らかとなった。また、動物のサイズが大きいことや移動頻度が少ないこと、背景と動物の色の差が少ないことは解析を行う上で大きな問題になることが明らかとなり、一方で背景に存在しない色を個体にマーキングするだけで容易に解決できることも明らかとなった。